オアマル便り 
スローワイフこと久保一代


1月31日におばばになった。今回分娩に立ち会わせてもらい、「私の経験とは違うんだー」と感激した。もう、この経験は自分ではできなくなったけれど、是非これからNZで出産される方は楽しみにしていてほしい。
ミッドワイフと呼ばれる助産婦さんは、専属の人がつく。この人との関係が、妊婦時代からお母さんになった後まで続く。相性もあるけれど、出産までには信頼関係がしっかりとできる。これは全く持って私は無経験。日本では有名産婦人科ほど医者である経営者の存在が大きく、その設備たるものホテルなみ。無痛分娩がいいとなると、すぐにそれを宣伝し、いや普通分娩がいいとなると宣伝を入れ替え、グルメ時代はグルメ食、いや粗食の時代だといわれれば、切り干し大根やひじきの煮物もありの家庭食ムードを出し、ミルク屋との癒着もありでどっさりミルク缶をプレゼントしてくれていたのが、母乳が一番だと、マッサージをほどこしてくれたり。
私の知り合いのNZ人も自宅出産をしている人がいる。ブリ(次男のパートナー)は病院だったけれど、その部屋の雰囲気は自室そのもの。彼女が主役だったからだろう。部屋の明かりの具合も持参した音楽のボリュームも、彼女の希望どおり。同席している私たちも白衣も帽子も着ない、普段のまま。飲み食いも自由。助産婦さんは、決して妊婦をせかしたりも、必要以上に元気づけたりもしない。彼女のペースにつきあう。苦しい陣痛に向きあった後は、しっかりと抱きしめたり、額の汗をぬぐってあげたり、勇気をほめたたえる。これは義理母である私にはできなかった。この二人の姿には感激して、何度も涙が出そうになった。勿論、片時も離れないうちの次男の存在も助産婦さんは、ほめたたえる。「今は二人の協力が大事よ、もうすぐ赤ちゃんと3人の協力が始まるから」と自分はあくまでも、介添えの立場でいる。なんと、謙虚な。そして、「ファミリーもここにいてくれているからね」とブリパパと私の存在も気遣ってくれる。
赤ん坊が生まれると、息子がへその緒を切り、おおざっぱに体を拭かれた赤ん坊は、裸のまま即母親の胸におかれる。体重も、量らない。それが2時間。おじじもおばばも、抱かない。さっきまでの苦しい表情は消えさって、ブリはお母さん顔になっている。赤ん坊は自分でえっさえっさと乳房にたどりつき、まだ出ないお乳を吸い始める。うーん。動物的だー。これでいいのだ。大感動!
いつもいうことだけれどNZ人にはホームがある。たった1日の入院なのに、家に帰りたがる。家庭には自分の居場所があり、家族が集うから。出産が病気でないなら、当然だろう。長年のローンを払い続けているにもかかわらず、家庭に主婦不在の家が多い日本。リタイアーした夫婦は、まず外に目を向ける。お稽古ごと、海外旅行。ますます家庭は、<家>という建物だけになってしまう。

ホームステッド271 http://www.globalife.jp/
 

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