久し振りのニュージーランド

              永田美夜子

2年近く住んだ私にとっては第2の故郷であるニュージーランドでしたが、旅行会社に勤めながら常にニュージーランド添乗の機会を逃し続けて、気付けば9年が経っていました。久し振りのニュージーランド、しかも1月は夏、と楽しみにしていたものの、世界的な異常気象で最高予想気温は17度、と見事に期待は裏切られたのでした。

今回のツアーの目的は秋田県にかほ市からカンタベリー博物館に寄贈される白瀬矗中尉の胸像除幕式とにかほ市の子供達が白瀬中尉の足跡を辿るものでした。
バブル経済に沸くニュージーランド。さぞかし街の景色も変わり、人々はあくせくしてあのゆったりとした風情はなくなってしまったのではないかと想像していましたが、庭は美しく手入れされ、公園では犬が走り回り、のんびりと人々は歩き、9年前とほとんど変わらない街に、何が一番大切なのかをこの国の人はきっと知っているのだな、と思わされました。様々な国に行きましたが、ニュージーランドの何が好きって、とにかく笑顔が多いことです。道では知らない人でも笑顔で挨拶。スーパーのレジでは笑顔で世間話。仏頂面で慇懃無礼なサービスにあったことがありません。見習いたいものです。

唯一変わっていたのは物価でした。私が住んでいた頃は1NZ$50円だったのが、今は現金で約90円、物価上昇も手伝って何でも高く感じました。

クライストチャーチ空港近くの南極センターの入場料はびっくりするほど高く、地元の友人達も気軽に遊びに行けるところではない、と嘆いていました。でも中々内容は充実しています。南極のブリザードとマイナス20度を体験する部屋で子供達は氷のスロープを滑りまくって大はしゃぎ、雪上車の体験乗車はジェットコースターのように急勾配を登ったり下ったり、最後には窓までくる水中に突っ込んで終わるというスリリングなものでした。私の前に座っていた子の驚いた顔を思い出すと今でも笑ってしまいます。全員ヘッドフォンをつけ、ドライバーが南極での状況を解説しながらの乗車でしたが、私も悲鳴で通訳どころではありませんでした。ぜひクライストチャーチに行かれる方は体験してみて下さい。特等席はドライバーの隣です。(怖いです)

個人的には私にとってニュージーランドの父であったハンドルビーさんのお墓参りが心に残っています。別のツアーと重なり、お葬式に行けなかった私にとって、初めて彼の死と直面した時間でした。頭では亡くなったことを理解していましたが、墓石に刻まれたEuan Russel Hundlebyの名を目にした途端、心では受け入れていなかったことを痛感しました。「今だに今日の出来事をあれこれ話し掛けそうになる」という奥さん、Budgeの言葉も痛いものでした。久し振りにお邪魔した家のキッチンがすっかり改装されていて驚いた私に「一体何年来ていないの?これは9年前に改装したのよ」そうです、こんなに長く行っていなかった私を暖かく迎えてくれたBudgeとニュージーランド。やはりここは私の第2の故郷でした。

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