NZニュース   シーシェパード特集

シーシェパード船長に接見して
サンケイ新聞記者 佐々木正明ブログより


調査捕鯨妨害事件で立件されたニュージーランド人、ピーター・ベスーン被告に、7日、判決が言い渡されました。懲役2年、執行猶予5年の有罪判決です。
 東京地裁の多和田隆史裁判長は「シー・シェパードの調査捕鯨は違法だという主義主張に基づいて、IWCの決議や声明を無視して、危険で悪質な妨害行為を繰り返していたもので、独善的な考えで妨害行為に加わった被告の刑事責任は重い」と指摘。 一方で、「被害者の一部に被害弁償を行ったほか、今後は南極海での反捕鯨活動に参加しないという意向を表明している」として刑の執行を猶予する決定を下しました。
ベスーンはこのまま日本にとどまることはなく、かねてから「家族に会いたい」と切望していましたので、判決後すぐに強制送還の手続きに入り、ニュージーランドに帰国するようです。 このブログでもお伝えしてきましたし、拙書「シー・シェパードの正体」にも詳細に記しましたように、私は東京拘置所に何度も出向き、拘留中のベスーン被告に接見してきました。
1回わずか15分の面会時間。それでも、数回は回数を重ねましたから、だいぶ、彼の考え方がわかったように思います。語弊がある言い方かもしれませんが、ベスーン被告は狂信者ではありませんでした。体育会系のノリがあって、裏表があまりない人のように見えました。会うたびに、「ササキサン」と呼びかけ、礼を尽くそうとする。活動家というより、根っからの船乗りなんですね。彼はかつて世界一周最速航行の記録を持っていたニュージーランドの英雄であり、キャプテンとしてクルーたちを束ねていましたから、自分の言動には責任を持っているような印象も持ちました。
しかし、私は、それが日本の拘置所という特別な空間で会っているからとも深く認識していました。彼がシー・シェパードの理念や暴力を受け入れて、別の側面では、笑いながら日本の捕鯨船を攻撃している姿も知っていましたので、注意深く彼の言葉に耳を傾けてきたつもりです。
ベスーン被告は、なぜ、世界的な批判を受けながら、日本は南極海まで出向いて調査捕鯨を続けるのかということを何度も口にしていました。そして、自らの愛する船、アディ・ギル号を沈没させた第2昭南丸の行為を日本の捜査当局はなぜ追及しないのだとも嘆いていました。私は聞き役に徹することを心がけました。限られた空間、そして時間の制約があるなかで、彼にしゃべってもらうことを第一に考えました。
日本の文化が好きだと言っていましたので、彼には「武士道」など多くの本も贈りましたし、四方山話で、ワールドカップでニュージーランド代表が奮闘していることや海洋での航海がどんなものなのかも話し合いました。そんな中で、彼がもらした「私は娘2人を持つ父親であり、ワトソンが言うように戦士ではない。彼は間違っている」という言葉も本心だと思います。ベスーンはシー・シェパードやその活動の実態をよく知らないようでした。
 彼が初めて代表のポール・ワトソンと会ったのは昨年の夏です。ワトソンとも数回しか会っておらず、情報はワトソンやSSのメンバーからの受け売りで、私が知っているような正体も知らないようでした。 私がワトソンは暴力を否定しないテロリストであり、「これまで人を傷つけたことがないなどというのは嘘だ」と言って、数々の例をあげて隠された情報を教えてあげると、急に無口になって戸惑っているような素振りも見せました。 そのためか私の言っていることにも信用しようとせず、自らの妨害行為を冷静に振り返ることはあっても、ワトソンについては「偉大なリーダーであり、優れた環境活動家だ」などと言って、否定的な見解は語りませんでした。
 私は「洗脳は解けていないのか」とも思いながら、日本にクルーを騙して送り込むことさえ容易なワトソンのカリスマ性と決して自分に負い目がこないようにするしたたかな戦略が怖くなったりもしました。だからこそ、数々の嘘を重ねても、騙された人々が彼の元をついてくるのでしょう。シー・シェパードはまさに、ワトソンをトップとするカルト集団なのです。
 ベスーンはニュージーランドに帰ります。現地では「英雄」として出迎える人たちもいるはずです。もちろん、「馬鹿なことをした」と冷静に受け止める層も半々ぐらいでいるのではないかとも思います。 空港に着くなり、ニュージーランドの報道陣に囲まれるはずです。一気にこの4ヶ月の情報の埋め合わせをして、自分がどのように語られていたかを知るでしょう。 そして、しばらくはテレビにも引っ張りだこになり、捕鯨を決して許さない記者達の誘導尋問にも答えるはずです。 もう歯止めがないわけですから、気を許して、一気にたまったものを放出するでしょう。手のひらを返したように、私の前で言ったこととは別のことを語り始める可能性もあります。 私はベスーンをいい奴だといいましたが、それはあくまでフリートークができない状況の中で受け取った仮の印象です。
 彼は手記を公表するため、拘置所の中で昨年夏にシーシェパードに加わってから、南極海で拘束されて、裁判を受けることまでの日常について文章を書きためていました。 そのうち、手記が発表されるはずです。私はベスーンがニュージーランドのメディアに何を言うのか、手記にはどんなことが書かれているのか、そして、日本やシーシェパードについて、どんなことを語るのかを注意深く見守りたいと思います。 場合によっては、ベスーンがシー・シェパードの暴力を止める大きな役割を果たすかもしれないと接見中に思ったこともありますが、それは今後の彼の言動次第です。
 あっさりとその期待も泡となって消えることだってあるでしょう。そのときには、また彼とコンタクトをとって、今度は制約もありませんから、シー・シェパードの正体をじっくりと伝えるつもりでいます。 ニュージーランドではさっそく、この判決についてかなりのボリュームで報じ始めています。  娘達は父親を心から尊敬しており、「動物を殺すことは残酷。だから私はベジタリアンになった。将来は動物を守るために手伝いたい」と言って、活動家になることを夢見ているようです。
 ベスーンは今後、ニュージーランドの社会に少なからぬ影響を与える人物になりうるかもしれません。謀略家、ワトソンも彼の役割を考えていることでしょう。


「反捕鯨活動で死者が出る」、強制送還のシー・シェパード元船長が会見
• 2010年07月14日 発信地:ウェリントン

米環境保護団体シー・シェパード(Sea Shepherd Conservation Society、SS)の反捕鯨行動中に日本の調査捕鯨船員にけがを負わせて有罪判決を受けたニュージーランド人のピーター・ベスーン(Peter Bethune)氏(45)が12日、今後の反捕鯨活動では「死者が出るかもしれない」と語った。 ニュージーランドへの強制送還後、初めて正式な記者会見を行ったベスーン氏は、反捕鯨活動家と捕鯨船団との争いは「醜い戦争へと突入した」と述べ、日本の調査捕鯨船との衝突でシー・シェパードの超高速抗議船「アディ・ギル(Ady Gil)」号が沈んだ際には、「ほとんど死ぬかと思った」と語った。 また、同氏が逮捕されてから5か月間、ニュージーランド政府は同氏を解放する努力を怠ったと不満を示し、ニュージーランド政府は「太った小さな愛玩犬だ」と怒りをあらわにした。
 これに対し、ニュージーランドのジョン・キー(John Key)首相は、駐日ニュージーランド大使館職員はベスーン氏の解放に向けてあらゆる手段をつくしたと反論。感謝の念を全く示さないベスーン氏に、不快感を示したと伝えられている。
 公判でベスーン元船長は、南極海での妨害活動に参加しない意思を表明、それが執行猶予の理由の一つとなった。しかし、この日は記者団に「日本の捕鯨をやめさせるのをあきらめることはない」などと強調。再び抗議船に乗り込むかどうかは明言しなかったものの、「次に何をするか、何人かと話をしなくてはならない」と述べ、SS幹部らと今後の活動について話し合う姿勢を示した。


反捕鯨活動家Bethune氏、NZ政府の対応に非難

 反捕鯨活動家のPete Bethune氏が東京で執行猶予付き懲役2年の判決を受け、ニュージーランドへ強制送還されてから、メディアのインタビューに応じ5ヶ月間の日本での刑務所暮らしと日本人の対応には問題は無いものの、ニュージーランド政府の対応に対する非難の姿勢を示した。 Bethune氏はTVNZ朝のニュースのインタビューで、オーストラリア政府が起こした非難行動と比べるとニュージーランド政府は日本側についているように感じるとコメント。 特に、Bethune氏はナイフ所持罪については認めたものの、ナイフは船に入る際のネットを切る為に用意したもので、殺傷の意志はなかったと訴えているのに対し、Murray McCully外務大臣が殺傷目的でナイフを日本の捕鯨船に持ち込んだと発言したことに怒っていると話した。
 それに対しJohn Key首相は、政府は Bethune氏をニュージーランドへ帰国できるように十分な努力とサポートをしたのにもかかわらず、 Bethune氏の政府に対する発言は非常に残念であり不快だとコメントをしている。 そしてBethune氏が執行猶予になった理由の1つとして、今後は南極海での反捕鯨活動をしないと話したことだったが、ニュージーランド到着後には環境保護活動家として、日本の捕鯨を止めさせる行動は続ける姿勢を示し、自分のこれまでの行動に悔いは無いと語っている。
 その他、日本の捕鯨船が3百万ドルもするAdy Gil号を沈没させたことに対する罪については問われていないことも非難した。
 判決前、Bethune氏の所属団体Sea Shepherd が同氏を団体から除名すると発表した。この発表には Bethune氏には衝撃的だったと語った。 しかし裁判後、この発言は刑を軽くするための法廷戦術であったとSea Shepherd は明言している。社会 2010年7月13日


シーシェパード復帰】ベスーンの行動に、ニュージーランド国民はどう思っているか?
                  2010/07/15 11:30

 強制退去させられたピーター・ベスーンが、帰国直後に語った発言は、ニュージーランド社会に大きな波紋をもたらしているようです。
『シーシェパードトレーナーを着たベスーンの発言』
http://sasakima.iza.ne.jp/blog/entry/1696768/ 
 ベスーンがどんな発言をしたかは上記のサイトをみてほしいのですが、ニュージーランドメディアは、ベスーンの発言を大きく取り上げています。  今日のエントリは、ニュージーランド国民がどのような意見を持っているかをお伝えしたいと思います。
『TVNZに出演したベスーン』
http://tvnz.co.nz/national-news/bethune-i-m-not-ungrateful-3640814?page=0&pagesize=5  
この記事には、「ベスーンのスタンスをどのように思いますか?意見をお寄せください」とのメッセージがあり、視聴者からの声が寄せられています。 この中からいくつか紹介しましょう。

①suzimarie
私はキー首相に賛成します(★ベスーンは、拘置期間中にNZ政府が解放の努力を怠ったと批判し、これにキーNZ首相が不快感を示した)。ベスーンは、家族のもとへ帰れるよう助けてくれた国に属している事を感謝すべき。ベスーンは自らの発言で、死んでヒーローになるためには、法を犯してもよいと望んでいるように「緑好きの人々」(greenies)の目には映っている。私は日本人が、クジラに対して行っていることを忌み嫌っているし、捕鯨をやめるべきと考えている。でも、巨大な捕鯨船の前に、息子や夫たちを向かわせることは愚かで危険な行為だと思う。

②dingoe7
Pete Buffoon Bethune(愚か者、ピーター・ベスーン)は、私のような日本に住むニュージーランド人を困惑させているし、彼に救いの手を差し伸べた日本やニュージーランドの人々の顔に泥を塗っている。助け出そうとする努力をあざけわらっている。恥を知れ。ベスーン

③Recall
私もキー首相に賛成します。一般的なニュージーランド国民の意見として、捕鯨には反対だけど、ベスーンの行動も支援しない。彼は、彼自身の争いにニュージーランド国民を巻き込もうとしている。そのことにも反対。彼が考えているのは狭い領域のことだけで、概して、ニュージーランドの国益を考えていない。彼がしたことはそれに値すると思う。

④Shawise
ピーター・ベスーン。あんたはヒーローじゃない。血の気の多い大バカものだ。

⑤koloalamahi
ピーター・ベスーンは、海洋法を理解していない。誰が、市民逮捕(★ベスーンは第2昭南丸に飛び乗った理由を、昭南丸の船長を殺人未遂の容疑で逮捕するためといった。市民逮捕はNZで認められている権利。日本にも常人逮捕というルールがある)するために、国際水域で日本船に飛び乗ったのか? 船に乗り込んだ時点で、それは日本の法律が適用される。いったい、世界中でどれほど、彼が市民逮捕をしようとしたと考えているのか。彼は日本国民ではない。このことを彼は理解していなかったのか? どうしたこんなことをしたのか。これは、反捕鯨的な行動なのか。彼は、(沈没した)シーシェパードのボートの代金を日本人に払わせようとしたのだ。

⑥ulrich
私は、自分の税金がテロリストを助けるために使われたことに辟易している。メディアは、私たちの国が困惑しているのを報道できていない。Peter the baboon(乱暴男・ベスーン)は、故意に危険な方法に身を置いた。今や、私たちは彼への援助を断ち切るべきだ。私たちの子供は良い学校に行く必要があるし、健康福祉システムも充実させなければならない。自分自身でボートを所有する金のある人は、自力で困難を乗り切れ

⑦Stefan Sarten
私はこの記事は、重要な日本の捕鯨問題まで一歩、踏み込んだ記事だと思う。キー首相は、(自国の国益ではなく)外国の国益のためにニュージーランドが努力しているかを象徴する代表者です。この国で何が起こっているのか。環境問題となれば、ニュージーランド人はいつも命をかけてきた。私はこのことにプライドを持っている。しかし、悲しいかな。私たちの地球で、かけがえのない生物を守ろうと考えている人は、クジラよりも早く姿を消している。

⑧ErikBlood@xe
故意であろうが、偶発的な事故であろうが、映像ははっきりと映し出している。アディ・ギル号は、日本船と衝突する瞬間に、ぐいっと前に進んでいる。このことは船尾のプロペラが出した泡で示されている。もし仮に、アディギル号が(衝突を避けるために)下がろうとしたのなら、泡は船体の下の方に浮き立つだろうし、それは見えない。国際海洋法によれば、どんなことをしても、衝突を避ける事が決まりだ。明らかに、南極海のような遠く離れた海域で、一か八かのチキンレースを行う事は犯罪だ。

⑨kiwi_in_moscow
ニュースのヘッドラインを飾るような状態をもたらしたピーターを祝福する。このことは明らかに彼の目標であり、達成した事だ。捕鯨は時代遅れであり、禁止されるべきだと思う。ニュージーランドは長い間、環境問題の最前線にいた。今や、気恥ずかしくなるほどに、国際社会におべっかをつかう国になってしまった。

⑩sawstone
私は、ピーターに向けられる否定的なコメントを見て悲しんでいる。私に取って、彼はヒーローです。彼のような人物のおかげで、日本人は、絶滅に向かう種を全滅にはできない。保護区で捕鯨する事は違法だ。だれもこのことを遵守しようとしない。彼がしたようなことをする勇気を持った人がいればいいのに。私たちの国の沿岸沖で、日本の船は漁をしていることがビデオでキャッチされている。彼らは全てのものに見境無く網をかけている。
 

・・・とここまで10人の代表的な意見を拾いましたが、これ以外にも、ほとんどがベスーンの行動を否定的に見ている人たちです。決して、私が否定的な意見ばかりを抽出したわけではありません。
 ⑩は、ベスーンを支持している人なのですが、否定的な意見ばかりなのでこうして嘆いているのです。この記事につけられているベスーンを全面支持の声は、⑩しかいないように思います。
 他の消極的肯定派も、ベスーンの行動についてコメントするのではなく、自国民を積極的に守ろうとしないNZ政府への非難だったり、自国の国益ではなく国際社会の利益になびいているキー政権への嘆きが含まれているような感じです。
 もちろん、これがニュージーランド社会の実態を鏡のように反映している訳でもありませんが、捕鯨には反対しながら、ベスーンの行動を支持しないという意見は事実として、少なくないようですね。