NZ,中国と自由貿易協定

 ロイター通信などによると、中国とニュージーランド両国政府は7日、北京で2国間の自由貿易協定(FTA)に調印する。中国が先進国とFTAを締結するのは初めて。ニュージーランドのクラーク首相と閣僚が訪中。中国側から温家宝首相らが出席して、北京市内の人民大会堂で調印式を行う。ニュージーランドはオーストラリア、タイ、シンガポールに次ぐ4カ国目のFTAとなる。中国はニュージーランドを手始めに太平洋地域との経済交流拡大を図る。  中国とニュージーランドは、FTA締結によって物品貿易やサービス、投資分野などでも自由化を実施する見通し。物品貿易では中国から輸出されるクツなどの履物や繊維製品など、ニュージーランドから輸出される乳製品の関税を撤廃して、貿易の拡大を図る。

 両国間の2007年貿易総額は、前年に比べ約10%増の75億ニュージーランドドル(約69億米ドル)で拡大傾向にある。ニュージーランドのゴフ貿易相は、「中国で活動するニュージーランド企業の事業機会を拡大し3番目の貿易相手国である中国との商業関係を強化する」と、対中FTA締結メリットを強調している。 FTAを積極的に推進する中国政府の狙いは、自由貿易の推進や投資の拡大とともに、「太平洋地域との外交関係改善や地域安保協力体制の構築など政治的な目的がある」(外交筋)との見方がある。太平洋にはキリバスやパラオ、ソロモン諸島など、台湾と外交関係をもつ一方、中国とは国交のない6の島国が残される。このため経済面からの切り崩しを狙っている。 中国が日本よりも先行して締結したASEAN(東南アジア諸国連合)とのFTAは「アジアでの大中華経済圏の形成の布石」(外交筋)とみられている。

 中国は「ASEANプラス3(日中韓)」による東アジア経済統合を提唱するが、中国の影響力拡大を警戒する日本は、インド、オーストラリア、ニュージーランドを加えた「ASEANプラス6」で中国の力を薄め、経済や政治力の地域バランスを図ろうとしている。外交筋は「もはや中国抜きの経済は成り立たない中、どう中国と接していくかが課題」と指摘する。

 すでにパキスタンやチリなどとFTAを結んでいる中国だが、先進国ではニュージーランドが初めて。今回のFTAをモデルに中国は、次の照準をオーストラリアなどとの交渉にあてるものとみられ、太平洋地域でも存在感や発言力を強めることになりそうだ。

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