第222例会 創立40周年特別企画
ニュージーランド牧草牛試食&ジョン・ハンドルビーさん講演会の報告

日時:9/25(土)13:30-15:30 

場所 :大阪 ドーンセンター5階 セミナー室 1


第222例会 創立40周年特別企画として「ビーフ、ラム ミートボード」の日本地区代表のジョン・ハンドルビーさんにニュージーランドの牧草牛について講演いただきました。
例会が始まると驚きました。なんとハンドルビーさんからの御好意のニュージーランド牧草牛を戴きまして、呉橋会長夫人が和風ローストビーフに仕上げてその腕前にも拍手。試食とは言え、沢山の量のローストビーフが一人ひとりのテーブルに配られ、御好意のワインをはじめ飲みものやデザートの葡萄も用意されていました。
会員の皆様の笑顔、勿論私も一口戴くと柔らかな食感、ジューシーで脂身の少ないことで比較的あっさりとしてとても食べやすく本当に美味しく戴きました。関西の人にもなじめるお肉だと思いました。おそらく、今回のローストビーフの料理をしていただいた会長夫人の腕前が牧草牛を一層引き立てていました。
試食に満足したところでハンドルビーさんの講演が始まりました。ニュージーランドの肉牛のほとんどは放牧による完全な牧草飼育にあること、そして牛の品種にも英国のアンガス、ヘレフォード、アンガスヘレフォードの交配牛が37%。輸出用食肉の安全管理体制はEUと米農務省が定期的に監査を実施しており、国際食品企画委員会に全面的に参加し、コーデックスの食肉衛生委員会の議長を務めるとともに、会議を主催するリーダー国です。 優れた食品安全管理システムに対する国際的な高評価を受け、日本への輸出肉は、日本政府の食品安全基準に関する要求事項を全てクリアしている。などの報告からニュージーランド牧草牛はおいしくて、安全な肉だと思いました。
私は今回の料理のように牧草牛をローストビーフ、BBQ、上手にソースとかハーブなどを用いたレシピで是非チャレンジしてみたいと思っています。
講演後は会員の皆様からの質問、試食しての感想などに大変盛り上がりました。
                    (行天 幸子 記)

「講演の概要」
畜産はニュージーランドの基幹産業で、肉牛は99%が牧草飼育されている。羊の頭数は3300万頭まで減少しているが、乳牛は増加傾向、肉牛は400万頭で推移している。
食品としての安全管理には万全を期している。農薬や獣医薬品の使用を管理、残留物と細菌の検査をしている。 トレーサビリティーシステムを1998年より導入し、2011年には個々の家畜を特定し、追跡するシステムが稼働予定。1頭1頭の牛の履歴を即座に認識できる。
牧草のみによる飼育は牛にとって最も自然な環境であり、ニュージーランドの資源を利用した持続可能なシステムの中で生産されている。
ニュージーランドの牧草牛はヘルシーで栄養たっぷりの肉であり、牧草牛は穀物飼育牛に比べ以下のような優位性がある。
• 環境に対する負荷が少ない
• 抗生物質に頼らない飼育
• 低脂肪、低カロリー、低コレステロール (Three Lowes)
• 心臓病の防止に効果があるオメガ3脂肪酸や抗がん性のあるリノール脂肪酸が豊富
• 鉄分が豊富に含まれていて、子供、妊婦、スポーツマンなどに向いている。
ニュージーランドでは動物福祉法が1999年に発効され、動物の苦痛の除去などに極力配慮するようになった。特にヨーロッパでは動物福祉が重要視されている。日本でも近い将来この問題が注目されると考えている。
環境への取り組みも重要視されつつあり、農業分野でも温室効果ガスの削減へ真剣に取り組んでおり、18年間で14%を削減した。
日本はニュージーランド牧草牛の金額ベースでは米国に次いで2位の輸入国、数量ベースでは米国、韓国についで3位の輸入国である。これまで冷凍肉が中心であったが、ここ数年はチルドビーフが増加し、高級化している。

「牧草牛に関する質疑」
たくさんの方から、ローストビーフがとてもおいしいという感想がありました。

• 料理によって和牛がおいしいケースやニュージーランド牧草牛がおいしいケースがあるように思う。
→ 関西は脂肪のうまみを好む傾向がある。しかし、世界的には赤みを好む傾向もあり、この二つの食文化を上手にミックスしてより豊かな食生活を楽しむことができると考えるとよい。脂肪がとても少ない赤身のニュージーランド牧草牛を調理する時のコツは火を入れすぎないこと。うまく料理すれば、とても美味しくヘルシーである。

• 輸入量は金額で2位、数量で3位ということになっているのはどういうことですか?
→韓国と日本は似たような数量を輸入しており、韓国は内臓肉や骨付き肉などを多く輸入し、日本は比較的高価な穀物肥育の牛を輸入するなどしているので、こうした逆転が起きている。

• 今日いただいた肉のお値段は?
→かなり上質な部分であり、小売値は100gが300円くらい。確かに安いが、販売戦略としては安いということを強調していない。基本的に良いものであることを強調している。

• 大阪での販売は?
大阪では試験的な販売が始まったところ。沖縄が最大の消費地。沖縄のスーパーのネット販売で牧草牛を取り寄せることが可能。

• 今日のお肉の部位は?
→ キューブローブ(またはレーバイローブ)といわれる部位で、テンダーロインやサーロインの隣の部位。
• 牧草牛のあまりのおいしさに、来年の「ラム料理会」では牧草牛もメニューに加え「ラムとニュージーランド牧草牛の調理・試食会」にしてはどうかとの提案があり、わが協会も来年は牧草牛の普及に一役買うことになりました。
• 若いシェフを対象としたキャンペーンが有効ですね。環境にやさしいことも考えると学校給食にも向いていますね。

• 日本では牛肉は健康に良くないということが言われるが、どう思いますか?
→ ニュージーランドではそういう認識がなく、今日初めて聞いた。牧草牛について言えることは安心して食べられるヘルシーな食品であるということです
会場より→ 「日本では、肉に対する誤解があるようで、たんぱく質不足になる老人が出てくるなどの問題がある。」「人間に良いものを3つあげるとしたら、それは、いわし、ブロッコリー、牛肉と言われることがある。今日の話を聞いて牛肉が体に良いということを知った。」という意見がありました。

• 穀物肥育は高価でおいしいという先入観があるが、これは間違いか?
→ うまみの質が異なりどちらがおいしいということはできない。料理の仕方に依存する。

• ニュージーランドでは地域の名前を付けたようなブランド牛というのはありますか?
→アンガス種については区別しようという動きがありますが、それ以外は特にない。

• スーパーで手軽に手に入るようなることを希望しております。
→ 小売へ浸透するよう努力しています。

• ニュージーランド人が見た日本の和牛の味は?
→ あぶらの味が異常。初めて食べた時、食べるのは容易でないと感じた。ステーキならニュージーランド牛がいいと思う。しゃぶしゃぶとかすき焼きは和牛がよいかもしれない。

会場より→ニュージーランド人に箸で切れるくらい柔らかい和牛を食べてもらって感想を聞いたら「オエー」という感じだとのこと。肉の嗜好は習慣の違いもあり、まちまちである。

「ニュージーランドについての質疑」

• 日本に長く住んでいて日本のプラス面マイナス面をどう感じていますか?
→ 日本人の性格とニュージーランド人の性格はとてもよく合う、仲良くなりやすいと言える。控えめなところなどはよく似ている。マイナス面としては、日本の国家の柔軟性が足りないと感じる。自由貿易協定(FTA)の話が急速にアジア地区で広がっており、韓国もFTAを加速している。日本は特に農業分野で硬直的であり、将来食料を海外から輸入できなくなるのではないかと心配している。

• オークランドの発展はニュージーランドの伝統的なカルチャーを失いつつあるように感じる。
→ オークランドの近く住んでいる人は、オークランドの人をまるで違う人たちと思っているなど、ニュージーランド全体からみると異質と思う。経済的発展とともに伝統的なニュージーランド気質が失われているように感じる。
日本人に道を聞くと丁寧に教えてくれる。オークランドではそれはあまり期待できないが、ニュージーランドの地方へ行けば日本と同じように丁寧に教えてくれると思うし、そうであると信じたい。